理事長ご挨拶


「映像の世紀」の小さな羅針盤になりたい 

  映画や映像は、私にとって常に人生の師でありました。時として一本の映画が、人生や世界観を変革することがあります。映画館から出たあと、世界の風景が違って見える―。そんな脊髄が震えるような「映画体験」を原初として、私の人生の少なくない何割かは映画と映像によってその骨格が形作られていることは否定のしようがない事実です。

  きっと、多くの人の中に、私と同じような強烈な「映画体験」が人生の骨格の一部になっている場合があることでしょう。その強烈な「映画体験」は、時としてまるで伝道師のように他者への「勧誘」を呼び起こします。この感動を他者に伝えたい、その想いが「映画体験」をリレーのように伝播していきます。
或いはその体験は、将来のクリエイターによる「創作」の土台として涵養されるはずです。著名なクリエイターの多くは、若き日に観た「映画体験」をその創作の培養にしている事例は、少ないことではありません。

  我々はいま、情報の洪水の中を生きています。既存の大手マスマディアはもとより、インターネット空間においても、個人がそのすべてを網羅的に総覧することは不可能なほどの情報量が、光や信号となって世界中を駆け巡っています。しかし、我々の情報受容量は、そういった世界の進歩に比例すること無く、多分19世紀とか20世紀初頭とあまり変わりはない状況です。

  つまり、氾濫する情報量に、我々のアンテナは全く追いついておりません。我々のキャパシティを遥かに超える情報量が錯綜する中、更にその中にあって強烈な「映画体験」への接触機会は、相対的に低くなっています。つまり、我々は年々増える、商品の陳列のスピードにその接触頻度が追いついていない状況です。これを超克するには、我々のキャパシティ自体を増大させるか、或いは優秀で適切なガイドを頼ってその助言を参考とするか、どちらかの方法しかないでしょう。実際には、前者は困難であり、後者の選択をせざるを得ない状況です。その為に、映画評論家や映画雑誌がこの世に存在しているからです。

  特定非営利活動法人江東映像文化振興事業団(江映)は、この様な現状の中にあって、明らかに後者の選択肢を提供する、その一翼としての役割を担うものとして東京都に認可されたNPO法人であります。当世の映画評論家や映画雑誌が、商業的な理由によって網羅できない「映画体験」への接触を、できるだけガイドしていく役割を担いたいと思っております。

  特定非営利活動法人(NPO法人)は、営利に依らない市民の手による非営利活動を行う法人です。商業的な文脈に依らない、純然たる社会貢献として、皆様に一つでも多くの強烈な「映画体験」をしていただく、その優秀なガイドたらん―。それを目的にしているのが、まさに当法人です。

  情報の氾濫が言われる昨今、数ある砂粒の中から、真の感動や興奮を発見するには、もはや他者の力を便る他ありません。それをお手伝いするのが我が法人です。皆様の人生における、骨格の形成に寄与するような映画・映像という強烈な「映画体験」の、一部でも接触のお手伝いが出来れば、当法人として望外の喜びであります。どうぞ、当法人を皆様の「映画人生」の触媒・ガイド・シェルパとしてお使いください。

  あるいは、そういった体験を、自ら創造することをも、当法人は目的としています。「映像の世紀」と呼ばれた20世紀は終わりました。しかし我々が生きる21世紀もやはり、あいも変わらず「映像の世紀」である、と言えます。「映像の世紀」に生きる我々の人生に、価値ある一光を照らす存在に、当法人はなりたいと考えています。


  2014年11月25日 特定非営利活動法人 江東映像文化振興事業団理事長 古谷経衡

 



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